Innobeat

シリコンバレーから、アメリカを中心に世界中のスタートアップ情報を発信します。

夢の電話と謳われたスマートフォン『Saygus』

f:id:innovation_technology:20150617024136p:plain

Saygus

スマートフォンデバイスの出荷台数においては、アジア勢の強さが目立つ。TrendForceが発表した2014年のメーカー別出荷台数ランキングによると、2位につけているAppleを除いて1位から10位まですべてが中国・韓国・日本メーカーだ。

ここに新たな挑戦を挑むのが『Saygus』だ。最大464GBの容量を持ち、デュアルSIM、2100万画素のカメラ、ウォータープルーフなどの機能を兼ね備えたスマートフォン、V Squaredを開発している。参考までに、iPhone6の容量は最大126GB、メインカメラの画素数は800万画素であり、大きさはほぼ同じであるようだ。

『Saygus』は2009年に初代機であるV1を発表するも、結局発売に至ることはなく陽の目を見なかった。次世代機になるV Squaredは今年のCES(毎年1月に行われるConsumer Electronics Show)にてInnovation Awardを受賞し、満を持してIndiegogoに登場。金額や人数は本当に正しいのか?というコメントも出ているが、表記上では2日間で1653人から$976K(約1.2億円)を集めている。

現在Indiegogoで購入すると1台あたり$600、今年の秋には発送予定となっている。(既に今年5月発売予定は半年弱遅延している)決して安い端末ではないが、SIMフリーのスマートフォンを探している方には選択肢の1つになるかもしれない。

Saygus V SQUARED | Indiegogo

気分をコントロールするデバイス『Thync』

f:id:innovation_technology:20150611054422p:plain

Thync

何を考えているのかがわかる、というのはSFや超能力の世界でよく取り上げられるテーマだ。もしこれが実現すれば、人間にとって大きな課題であるコミュニケーションの問題などはすぐに解決してしまうだろう。

『Thync』は考えを読み取るわけではないが、代わりにあなたの気分を外部から変えてしまうというデバイスだ。2つの気分、EnergyとCalmどちらがよいかをアプリから設定すると、デバイスを身につけた人の気分が変わってくるのだそうだ。1日のはじめや運動をするときは前者を、ストレスを抑えたいときやリラックスしたいときは後者を使うことができる。

『Thync』は上図のように頭に身に付けるのだが、それによって脳のニューロンに働きかけているわけではない。こめかみ部分の皮膚に微量な電気信号を送ることで、本能的な反応が脳に発生、それが感情に影響を与えるのだそうだ。現在は医療用ではなく個人が生活中で使うことを念頭においているため、刺激も強くなく安全なものだという。

デバイスを含めたキットは$299で今年の10月には発送を開始する。プラシーボ効果なのか実際に影響が及んでいるのか判断するのは難しそうだが、結果としてセルフマネジメントに効果を生むことができれば面白いのではないだろうか。

Hands-On With Thync’s Mood-Altering Headset | TechCrunch

従業員の健康増進を促進・管理するためのプラットフォーム『Jiff』

f:id:innovation_technology:20150528132252j:plain

Jiff

アメリカはもちろん、日本でも医療費の増加は大きな社会問題だ。その負担や影響は国民に直接かかるだけではなく、企業にも及んでいる。また従業員が健康であることが収益性の高い企業を作る、という概念は国を問わず深く浸透しており、これも企業にとっては大きな課題だ。

そんな企業に対して従業員向けの健康増進サービスプラットフォームを提供するのが『Jiff』である『Jiff』は様々な種類のヘルスケアサービスのプラットフォームになっており、企業側が定めた重点改善ポイントを元にその有料プランを提供することができるのだ。更に従業員に応じて目標やインセンティブが設計できるだけでなく、その成果を一覧で管理することもできる。まさに企業側としては投資効果を見えやすくするという点だけでも、大きな価値があるだろう。

インセンティブについては、保険会社からのキックバックを設定することもできるし、何かしらサブスクリプションサービスの提供でもいいだろう。さらに会社内や部署内で目標に対する達成状況を共有することで、身近なソーシャル性も生むことができる。

『Jiff』のプラットフォームには、Nike+、FitbitなどのアクティブトラッキングからFatSecretのような食事管理、Teleadocなどオンライン診察サービスまで、9分野にわたって50以上のサービスが提供されている。あらゆるサービスをまとめて企業から提供するという発想は、日本をはじめ世界中で歓迎されていきそうだ。

データ通信を世界中に届ける『Pangea Communications』

f:id:innovation_technology:20150513090020j:plain

Pangea

Facebookが主導している「Internet.org」やGoogleによる「Project Loon」は、いずれもいまだインターネット環境が届いていない地域へ届けるためのプロジェクトだ。これはただ社会貢献というだけではなく、世界中の人々へ自社のビジネスを届けるための立派なビジネス戦略なのだ。これまでこの理想を実現するためにドローンや気球の利用が発表されていたが、『Pangea』はこれを異なる方法で実現しようとしている。

5月4日から6日まで行われたTech Crunch Disrupt NYにて発表した『Pangea』は、通信データを超音波に転換し、電話回線を介してモバイルデバイスへ伝達させる、というイノベーティブなソリューションを紹介した。ピッチ中にはデモも行われており、データ通信をオフにしても一瞬電話がかかった後にゆっくりではあるがGoogleでの検索結果が読み込まれる。普段Wifiを利用している我々からすると(特に回線スピードの早い日本にいると)非常に遅く感じられるが、手段がないところにソリューションが生まれるというのは大きな一歩である。

設定方法もPangeaのアプリケーションをダウンロードするのみ。最初は都市部などWifiがある場所でダウンロードする必要があるが、1人がダウンロードすればBluetoothを通じて他のデバイスへアプリを送る事ができるという。既にアフリカの通信会社と共同事業の話が進んでおり、この夏にはナイジェリアでサービスを開始するという。国を選ばないソリューションなので、ここで実績ができれば展開はそう難しくはないだろう。

動画を中心としたコミュニケーションを生み出す『Storygami』

f:id:innovation_technology:20150512114230j:plain

Storygami

Webサイトトップにある上記の文、「次世代の動画」と見て何を想像するだろうか。3D映像やVRの進化による次世代を想像することもできるだろうが『Storygami』のFounder達が考えたのはコンテキストを持つ動画であるそうだ。

『Storygami』は、動画をマーケティングに利用する企業に向け、その動画にコンテキストを簡単に加えることができるツールを提供している。ブログや画像、関連動画やTwitter等ソーシャルストリームなどを、ドラッグアンドドロップで簡単にかつ見栄え良く動画に紐付けることができるのだ。現在のベータ版でも既にYoutubeとVimeoの動画に統合することができるという。

Co-Founderの3人は動画コンテンツを取り扱う会社を経営していたが、その中で動画単体ではコンテキストや詳しい情報を含めることが難しいという問題に直面していたという。その問題を解決すべくプロトタイプを作成する中でVirgin Groupの創始者であるRichard Bransonにピッチする機会を得、見事そのバックアップを受けることができた。

現在『Storygami』は500Startupsのプログラムに参加しており、今年の夏にDemodayを行う予定だ。参加スタートアップのうち、61%のスタートアップにはアメリカ外で生まれたFounderがいるということで、非常に国際色豊かになっている。下記リンクに全企業が掲載されているので、是非確認をしてみてほしい。

500 Startups Announces Batch 13 in Mountain View | 500 Startups

 

株式取引を身近にする『Robinhood』

f:id:innovation_technology:20150508115419j:plain

Robinhood

あらゆる業界において、技術を武器にしたスタートアップが既存のプレーヤーを相手に価格破壊へ挑戦している。以前紹介した『CoinPip』も手数料が高いという問題を抱える海外送金サービスに挑戦していたが、『Robinhood』は株式売買の世界に価格破壊を起こすスタートアップだ。

アメリカの株取引においては1回あたりの取引に$7~$10が手数料として取られ、更に最低預金額が定められている現状がある。これは若者や貧しい人々にとって敷居の高いものだった。『Robinhood』はその手数料を無料にして最低預金額もなくし、さらにスマートフォンアプリ上だけで取引が完結できるという画期的なサービスなのだ。50万人もの人が事前登録を行い、今年3月のサービス開始から既に$500Mもの取引が行われたという数字も、関心の高さを表しているといえるだろう。

では本来手数料ビジネスであるはずのサービスをどのように収益を得ているのだろうか。もちろん2014年9月までに調達した$16Mが使われていることはたしかなのだが、その他にもユーザーが預金している未投資資本の利子がキャッシュポイントとなる。有料サービスも今年後半には始めるとのことなので、それにより収益化を目指すのだろう。

さらに本日New Enterprise Associates(NEA)等より$50Mの調達を発表し、オーストラリアへの進出を発表した。現在承認プロセスを進行中で、こちらも今年後半にサービスを開始する予定だという。更にその後はカナダ・イギリスが候補となっているようだが、日本に進出する日は遠くないかもしれない。

北京を拠点とする『Ninebot』、競合であるSegwayを買収

f:id:innovation_technology:20150417023005j:plain

Ninebot

北京時間の4月15日、2012年設立の中国企業『Ninebot』が2001年設立のSegwayを買収したとのニュースが流れた。『Ninebot』はシリコンバレー拠点のベンチャーキャピタルであるSequoia、いまや世界第3位の携帯電話開発会社である中国のXiaomi他から$80Mの調達をしており、この資金を買収資金の一部にあてたのではないかと考えられる。

公道での使用を許可されているSegwayは、アメリカではかなり身近な存在だ。サンフランシスコ市内には(おそらく)観光向けのレンタルセグウェイショップがよく見られるし、空港では警備員がセグウェイで移動している姿を目にすることもしばしば。買収額は公開されていないが、既に公開されているだけでも$161Mを調達してるセグウェイの買収額は上記の調達額をはるかに超える額だろう。

『Ninebot』の主力商品は2種類、セグウェイと同様の電動二輪車と電動一輪車だ。共に日本では昨年から販売を開始しているようだが、販売代理拠点を見るとヨーロッパに重点をおいているらしい。日本での販売価格ベースだが、セグウェイが92万円からなのに対し、『Ninebot』の電動二輪車は50万円、電動一輪車だと20万円となっていることから価格競争力は高かったのだろう。ちなみにアメリカではオンラインでのみ売られており、それぞれ$3200、$850とのことなので日本よりもかなり安く購入できそうだ。

共にCEOをつとめるCo-Founderの2人とCTOは北京航空航天大学を卒業。2009年に北京で開かれた、日中韓ロボット研究者ワークショップにて発表した研究成果を元にして起業したようだ。

セグウェイブランドもそのまま維持するとのこと、今後2社がどのように共働していくのかが楽しみである。