Innobeat

シリコンバレーから、アメリカを中心に世界中のスタートアップ情報を発信します。

YC W15 卒業スタートアップ: ドローン利用を身近にする『DroneBase』

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DroneBase

Amazonの参入など話題が尽きないドローン。だが、見るからに操縦が難しそうなイメージはないだろうか。以前紹介したように障害物を自動的に避けるなど技術的なソリューションも生まれつつあるが、まだしばらく個人の熟練度が必要になるだろう。

『DroneBase』はドローンを使用したいユーザーに対し、ドローンとその操縦者を派遣して撮影するサービスを提供している。ドローンの購入も練習も必要なく、プロジェクトに応じて撮影を依頼することができる。撮影目的として現在利用できるのは不動産の撮影のみだが、建設業や鉱業、農業等や映画への利用に今後拡大するようだ。

CEOはニューヨーク大学を卒業した後、アメリカ海軍にてイラクやアフガニスタンに派遣された経験を持つ。その後Harvard大学でMBAを取得し、Goldman Sachsに勤務した後に『DroneBase』を起業した。もしかしたら海軍での経験からドローン利用の可能性を感じていたのかもしれない。

『DroneBase』はドローンの撮影画像がどれだけプロジェクトに利用できるのか試してみたい業者にとってうってつけのサービスだろう。

YC W15 卒業スタートアップ: 新たな治療法を確立する『Zenflow』

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Zenflow

Y Comninatorに参加するスタートアップはインターネットに関連した事業を行っているとは限らない。今回発表したスタートアップの中には、化学製品の新たな開発方法を研究しているものや新薬の開発をしているものもあった。

『Zenflow』もその1つで、前立腺肥大症の新たな治療法を提案している。前立腺肥大症はアメリカだけで1400万人、グローバルでは2億人が患っているといわれ、致死率は高くないものの様々な場面で生活に影響を与える(QOLを低下させる)と言われている病気の1つだ。これまでは投薬か手術という治療法が一般的だったが、『Zenflow』は治療に有効な医療機器を開発することで、新たな選択肢を生み出そうとしている。

『Zenflow』はStanfordのBiodesign Innovation Fellowで同僚だった2人がスピンアウトする形で創業。Y Combinator参加以前には、Stanford内のアクセラレーターであるStartXに参加していた。

CEOはStanfordの修士を卒業してリサーチエンジニアとして働いた後、ヘルスケア領域で起業した経験を持つ。またCTOがFDA(アメリカ食品医薬品局)で審査を担当していたことは、『Zenflow』にとって大きなアドバンテージになるだろう。

YC W15 卒業スタートアップ: 商業ビルをスマートに管理する『Build Science』

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BuildScience

Googleに買収されたNestなど、スマートホームに関する商品は次々と開発されている。温度湿度等環境の管理から防犯、色を調整できる電球などその種類は様々だが、間違いなく今後のトレンドになるといえるだろう。同じように商業ビルでもインターネットに接続して管理することを可能にしたのが『Build Science』だ。

『Build Science』はビルに設置された既存のシステムに接続するだけで、空調システムや照明設備、防犯設備やネットワーク設備などを1つのダッシュボードで管理できるソフトウェアを開発する。これまでにも個々の設備を管理するソフトウェアはあったが、全てをまとめて管理できるのが『Build Science』の特徴になる。

約28000坪(93000㎡)という巨大な敷地を持つトロントの有名銀行において導入したケーススタディによると、6000ヶ所からデータを集めて解析することで年間$0.5Mのコストを削減出来る見込みだ。

『Build Science』はWaterloo大学でエンジニアリングを卒業し、その後スタートアップやBroadcomなどの大企業で働いたCo-Founder2名により設立。トロントで設立されたが今後はサンフランシスコを拠点として事業を拡大するという。

※参考記事:YC-Backed BuildScience’s Platform Ties Hardware Systems Together In Big Office Buildings | TechCrunch

YC W15 卒業スタートアップ:レストランの味を家で再現する 『Cinder』

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Cinder

IoTの波はキッチンにも到来しており、今回のYC Demo Dayではこの『Cinder』と真空調理法のためのハードウェア『Nomiku』が発表された。どちらも既存のキッチン用品をITにつなげただけではなく、新たな調理の形を提案している点が面白い。

『Cinder』は正確な温度管理によってあらゆる食材を絶妙に焼きあげる調理器だ。肉を焼けばレアからウェルダンまで好みの焼き加減に焼き上げ、さらに食べる時まで適当な温度で保つことができる。もちろん肉だけでなく、玉ねぎを入れれば炒めものからキャラメリゼ、コンフィにまですることができる。

デバイスのインターフェイスにはアプリを使っており、アプリの表示に従って選択するだけで最適な温度と時間を設定。すると、調理が終わった際にプッシュ通知で知らせてくれるため、調理中はキッチンを離れることができる。

『Cinder』は昨年9月にサンフランシスコで行われたTechCrunch Disruptに参加しており、またY Combinatorに参加する以前にハードウェア専門のインキュベーター、Highway1を卒業している。CEOは大学卒業後にトヨタの日本本社にて勤務、MBAを取得したあとにPARC研究所などで働いていたCTOと共に『Cinder』を創業した。

現在プレオーダーを受付中で1台あたり$499、発送は2016年春予定とのこと。少し高く感じるが、Webサイトのトップページにあるステーキを目にすれば購入を検討したくなるかもしれない。

YC W15 卒業スタートアップ: 捨てられる薬を活用する『SIRUM』

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SIRUM

 Y Combinatorでは2013年よりNPOの受け入れも開始している。(その際の発表記事はこちら)今回のバッチでは2団体が参加しており、この『SIRUM』はその1つだ。

Stanford大学を拠点とする『SIRUM』は、まだ使用期限内にも関わらず廃棄されようとしている医薬品を必要としている人の元へ届けるという事業を行う。アメリカでは50億ドル分の薬が廃棄されており、一方で5000万人が処方された薬の受け取りを費用が高いことから避けているのだという。その不合理を寄付という形で解決するのが『SIRUM』というわけだ。

廃棄を検討している医療機関はその薬をプラットフォームに登録。セーフティーネット医療機関がそのプラットフォームから必要な薬を選択すると、ドアtoドアで受け取ることができる。各州の"Good Samaritan Law"(聖書の例え話にある"善きサマリア人のたとえ"に由来する)という、無償で善意の行動を取った際に当事者を法的に保護する法律に準拠しており、寄付者の情報は『SIRUM』から公開されることはない。

昨年発表されたYCのスタートアップに対するリクエストには"Diversity"という項目があり、スタートアップもNPOも関係なく、様々な人に対してテクノロジーを提供するサービスに投資したい、という記載がある。ビジネスモデルも考え方も一見異なるNPOとスタートアップが共に事業を考案することで、新たに生まれるものもあるのかもしれない。

YC W15 卒業スタートアップ:駐車場探しのイライラをなくす 『Smarking』

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Smarking

公共交通機関が発展していないアメリカでは、車が生活の手段だ。ただその車にも、駐車場が見つからないという欠点がある。サンフランシスコのように狭い都市では駐車場代だけでもかかってしまうため、UberやLyftなどのシェアライドが流行っているという一面もある。

それに対し 『Smarking』はその駐車場問題の解決を目指す。駐車場に特化したビッグデータ解析をできるツールを提供し、効率的に各駐車場が使われるようにするのだ。過去のデータから需要を予測して価格や人員を最適化。同時にユーザーにも駐車場の空きがあることを伝える昨日を開発し、空きスペースをなくすことで駐車場管理者の収益最大化を目指す。

このような特化型のビッグデータ解析ツールは昨今流行しているように見える。それもそのはず、ビッグデータをマニュアルで適した形に解析できる人材はまだまだ不足しており、それをツールやサービスに代行するためにはある程度分野を絞る必要があるのだ。あらゆるデバイスやシステムから大量のデータが取得できると言われれいるこの時代には、非常に需要が大きい分野なのだろう。

 『Smarking』は2013年にBostonで設立、MITのアクセラレーターを経て昨年YCに参加した。CEOとData Scientistの2人は共にMITから博士号を持つ。ことで

YC W15 卒業スタートアップ: 家にいながら処方薬を受け取れる『NimbleRx』

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NimbleRx

体調が悪いとき、やっと診察が終わったと思ったら今度は薬をもらうまでに長蛇の列…そんな経験をしたことはないだろうか。あるいは、出勤前に病院に寄ったけど薬を受け取るまでの時間を取れなかった、そんな経験もあるかもしれない。

そんな問題を解決するのが『NimbleRx』だ。その内容は診察を受けた病院からサービスを通じて薬局へ処方箋が送られ、それを指定した住所まで同日に配達してくれる、という単純なものだ。提携している保険に加入していること、及び『NimbleRx』の会員登録を済ませていることが条件となるが、処方箋の受け取りや配達が簡単に第三者に対応を依頼できる商品ではない、という点にポイントがある。

アメリカにはHIPPA(The Health Insurannce Portability and Accountability Act:医療保険の携行と責任に関する法律)という法律があり、基本的に医療データを取り扱うサービスはこれに準拠していることが求められる。もちろん『NimbleRx』も準拠しており、これによって他の配達代行サービスそのまま参入することは難しい分野だろう。

また、日本のように国民皆保険制度を持つ国は限られており、アメリカでも基本的にはそれぞれに医療保険に入ることが求められる。そのため、保険会社の顧客に対するサービスの一環として『NimbleRx』のようなサービスは重宝されるのだ。実際配達の際、顧客は手数料無料で利用できるとなっているため、おそらく保険会社や薬局がその代金を負担しているのだろう。