Innobeat

シリコンバレーから、アメリカを中心に世界中のスタートアップ情報を発信します。

YC W15 卒業スタートアップ: 医療現場の効率化を促す『analyticsMD』

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analyticsMD

 病院に行くと医師は忙しそうでなかなか話をする時間がない。そんな不満はどの国でも同じ。3分診療などと揶揄する言葉もあるが、それは医療スタッフが悪いわけではないはずだ。

この問題をテクノロジーで解決するのが『analyticsMD』である。このシステムは、内外部からのデータを元に機械学習や経営工学のアルゴリズムによってリアルタイムに解析、リソースがどれだけ必要なのかを推測して起こすべき行動を提示する。これまでにも状態をモニタリングするダッシュボードは数多くあったが、データのパターンを解析しながら異常な状態に対しアラートを上げられるというのがその強みだ。

またもう一つの強みが、ERから手術室、病棟など様々な現場に適用できることだ。電子カルテ情報や医療機器の記録、ベッドに取り付けたセンサーから人事管理システムまであらゆるデータの解析に対応していることで、使用用途に制限がない。

当初はリアルタイムダッシュボードとしての機能のみで提供していたが、そこに見えるデータを活かす部分に難しさがあると感じてこのようなシステムに進化したという。既にサンフランシスコの病院等複数の顧客がいる『analyticsMD』が今後医療システムの改善に貢献することを期待したい。

※参考記事:AnalyticsMD Applies AI To Optimize The ER | TechCrunch

YC W15 卒業スタートアップ: ロボットの目を持つレジ『mashgin』

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Mashgin

最近日本でもたまに目にすることがあるセルフレジ。グローバルでは2012年に17万台が導入されており、日本だと西友が既に2014年末時点で40店舗に導入している。私の住むエリアにもいくつかのスーパーではセルフレジを見かけることがあるが、導入コストやセキュリティ面での不安等からあまり普及が進んでいないようだ。

そんな中、これが実用化されれば普及スピードは上がるのではないかと思わせるのが、『mashgin』のセルフレジだ。いちいちバーコードを当てる必要はなく、デバイス上に置かれたものを重量計測及び3D認識により正確に認識、そのまま決済ができるのだという。

現在行っているテストでは98%の精度で認識することが出来、Googleを含む1万件以上の食堂を運用するCompass Groupと提携し、今年から試験導入することが決まっている。

Co-FounderであるCTOはトヨタのHumanoid Robotics Labやベル研究所でコンピュータービジョンを研究、同じくCo-FounderであるCEOはYahooやMicrosoft, Facebookで機械学習やデータサイエンスに関する仕事を行っていた。コンピュータービジョンとはロボットが持つ目に関する研究を行うそうなのだが、ロボットの目を持つレジと考えればこのデバイスをイメージしやすくなるかもしれない。

※参考記事:Mashgin aims to shorten the cafeteria line with computer vision | Gigaom

YC W15 卒業スタートアップ: 身体の一部となるテクノロジー『Stanford Cyborg』

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Standard Cyborg

義足を手に入れるまでに必要な費用はいくらかと言われて、すぐに答えられる人はどれだけいるだろうか。日本では国による保護があり月額上限が定められているようだが、実際の費用は数十万円から数百万円になるそうだ。

この問題に対して最新テクノロジーにより低価格化を実現したのが、『Stanford Cyborg』だ。自身も幼い頃から義足と共に生活してきたFounderが試作を重ね、あるプラスチックをカーボンファイバーで覆うことで十分な強度を持つ上に水にも強い防水の義足が生まれることとなった。しかも価格は$799。

義肢装具士や本人とともに寸法をして3Dプリンターで作成。最終的にはマニュアルで調整をして完成する。現在は膝下に装着する義足だけに対応しているが、今年中には膝上からサポートする義足にも対応するようだ。

日本発のexiiiも3Dプリンターを利用することで安価な筋電義手handiiiを開発、日本における筋電義手の普及率を欧米並みに上げることを目標としている。SXSWで出会ったアメリカ人投資家から「日本のロボティクス技術は人を助けるために使われている」と言われた時は非常に嬉しかったが、アメリカからも同じようなスタートアップが生まれているようだ。

YC W15 卒業スタートアップ: 安全な自転車走行を実現する『Vanhawks』

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Vanhawks

IoTの流れが乗り物へも迫りつつあるのは周知の事実だ。車の自動運転に関しては自動車メーカーはもちろん各社がしのぎを削っている。日本の都市ほどではないもののアメリカでも流行っている自転車へ、その流れがたどり着くのも想像に固くないはずだ。

『Vanhawks』はナビゲーションをスマートに実現しながら安全のサポートを行う自転車を提供する。既に昨年5月にKickstarterで$820Kを調達し、予定からは遅れたものの2015年にこの支援者に対しては商品の発送を完了。今月実施したシードラウンドでは2000年のシドニーオリンピックでトライアスロンの金メダリストであるSimon WhitfieldやY Combinatorが出資した。

車体はカーボンで作られており、そこにジャイロスコープや加速度計、スピードセンサーなどあらゆるセンサーが埋め込まれている。後方に障害物が接近するとハンドル部にアラートが上がったり、スマートフォンの地図を直接見なくてもあらかじめ選択したコースの方向へ方向指示が出たりと、安全にこだわった作りだ。

現在もサイトから購入することができ、1台が$1249から。自転車通勤を始めようかと考えている方は是非選択肢の1つにいれてほしい。

YC W15 卒業スタートアップ: 会話をしながらレストランを探す『Luka』

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Luka

AIの進化は非常に早く、既にコールセンターなど顧客対応を行う実験では、実際の人間が話しているのかAIをベースとしたコンピュータが話しているのか、判別できなかったという実例もある。『Luka』はそれを応用し、人間が打ち込んだ自然な文章からレストランの検索を行うメッセージ形式のサービスを提供している。

友人にメッセージを打つように『Luka』に向かってメッセージを打つと、その問いかけにぴったりなレストラン情報を提供してくれるのだ。「何が食べたいかわからない」と書くと適当なお店を表示する、というのは従来の検索型サービスにはできない仕組みだろう。

検索、つまり会話を続けるにあたって幾つか定型文が表示されるし、もちろん自由に文章を打つこともできる。Luka on Product HuntにあるFounderのコメントよると、精度は90%のものを目指しているようだ。

チームは昨年Tech Crunch Disrupt Londonに出場し、今年2月にSan Francisco及びBay Areaでサービスを開始。現在はレストラン検索という分野に特化しているが、これが検索の新たな形になるのではないだろうか。

YC W15 卒業スタートアップ: お世話になりたくないサービス『Rescue Forensics』

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Rescue Forensics

 アメリカでは毎年10万人のもの子どもが人身売買の対象とされ、その多くが児童買春の対象にされるという。とはいえこの数値を見ても、日本であればこれがスタートアップの事業領域になるとはなかなか考えられないだろう。それを実現したのが『Rescue Forensics』だ。

『Rescue Forensics』は各都市の警察組織などを顧客とし、インターネットを通じて収集した人身売買調査に有益な情報を提供している。サービスを通じて何かの判断を下すわけではないが、警察が収集するには難しい、ごく小さなインターネット上の動きまで収集することができる。

Co-Founderの2人はロースクールを卒業後パートタイムでこの事業を行っていたが、Y-Combinatorの面接時もし受かったらフルタイムで本事業に取り組むと宣言、実際に『Rescue Forensics』として取り組むに至った。サービスローンチから既に10名の被害者を救出しており、800以上の都市をモニタリングしている。

一見ビジネスチャンスが想像できない場所にもたしかに市場はあり、テクノロジーが人を救うことができる。そんなことを思わせてくれるスタートアップである。

※参考記事:Software Eats Sex Trafficking: YC’s Rescue Forensics Aids Law Enforcement In Finding Victims | TechCrunch

YC W15 卒業スタートアップ: 新たな交通機関のあり方を提案する『Chariot』

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Chariot

アメリカの公共交通機関には時々驚かされる。先日訪れたテキサス州のオースティンでは、朝の通勤時間の路面電車が20分遅れになっていたほどだ。(ちなみに30分に1本しか来ない電車だった)

そんな交通機関を新たに生み出そうとするのが14人乗りのVanをバスとして運用『Chariot』。一見日本でも見られるコミュニティバスのように聞こえるが、そのルートの作り方が面白い。なんとユーザーが自分でルートを設定できるのだ。もちろん全員の案を採用することは出来ないが、クラウドファンディングのように一定数の投票が集められれば実際のバスルートが誕生する。

2014年末より運用を開始し、現在はサンフランシスコを中心としたエリアのみで4路線。路線によって6分~15分間隔で運行しており、午前と午後の通勤時間のみ運用されている。午後の運行時間が4時30分より6時30分まで、さらに金曜日は15分繰り上がって運用されている路線があるなど、ユーザーのニーズを上手く反映しているようだ。

チケットは10ドル/2回乗車分から30日間乗り放題で90ドルまで。Uberが提供するサンフランシスコ市内であればどこでも5ドルで移動できるサービスも非常に魅力的だが、毎日同じルートを使う通勤であれば『Chariot』も選択肢になるだろう。